ブランド力を蓄え、日本市場に再挑戦: ムーファンデザインスタジオ
スタジオ設立のきっかけ
ムーファン・デザイン・スタジオを立ち上げるきっかけとなったのは、共同設立者である符麗娟と私が大学で同じクラスになったことでした。当時、私は昼間はグラフィック・アーティストとして、符麗娟はアート・デザイナーとして働きながら、夜は国立台湾芸術大学(NTUA)の工業デザイン学科の夜間コースに通い、工芸品創作とデザインに関する講義を受けていました。
卒業制作を一緒に準備する中で、当初は木工専攻の先輩と同じ家具制作の道を歩みたいと思っていましたが、家具以外の小物にも木工の可能性を考えるようになりました。2ヶ月間、集中的に加工し、失敗から学び、パートナーの麗娟と卒業制作「呆頑文化木偶(注:台湾文化をテーマにしたフィギュア)」を完成させました。短期間での木工技術の飛躍は多くの先生方が二人で作ったとは思わないほどで、その結果、良い卒業結果を得ることができました。
旋盤工芸で得た達成感から、創作を続ける可能性を考えるようになりました。兵役を果たした直後から、大学時代に制作した動物人形から新たな動物ラインナップを制作し続け、それを台湾干支人形に発展させ、修士課程を受験するための作品とし、学校に戻って好きな木工制作に取り組みました。2009年、国家芸術基金会の「小規模スタートアップ補助事業(微型創業輔導計畫)」の奨励を受け、修士課程在学中にパートナーの麗娟と共同で「ムーファン」デザインスタジオを設立し、木工のプロを目指すことになりました。
商品化:動物フィギュア&Wings of Penシリーズ
スタジオ設立後、私たちは動物フィギュアを量産し、販売することを決めました。長年に渡ってフィギュアを量産化していく過程で、メーカーとの協力を通じて多くの貴重な経験を積み、さまざまな形状の動物の手足パーツをさまざまな専門メーカーに委託し、製品に組み込むことを学びました。この経験から、私はバイオデザインの可能性を探り、木工における引き算デザインの概念を学びました。
2015年のある日の午後、私と同僚が動物型ペンの開発の可能性について考えていたとき、窓の外で鳥がさえずりました。ふと、ペンの先端を鳥のくちばしとしてデザインしてはどうかと思いつきました。鳥のペンのプロトタイプは当日の午後でできましたが、スタンドを開発するのに1年近く試行錯誤を繰り返しました。
2016年に発売したWings of Penシリーズの第一弾商品「ツバメのペアペン」は、発売以来ウェディング市場やビジネスギフト市場で人気になり、これまでに5,000セット以上を販売し、mufunブランドで最も売れている定番商品となりました。ペアであることの縁起の良さは、現在も台湾や中華圏のギフト市場で人気を博しています。
研究開発を続けるWings of Penモダンシリーズは、台湾のクラウドファンディングプラットフォーム「zeczec」にて生産開始の資金調達に成功し、鳥類の品揃えを増やすことでバードウォッチャーの人気を獲得しました。台湾の固有種であるアオカササギとモズは、ともに縄張りを守る自衛意識が強く、外国要人へのお土産として、外交部からの注文を数多く受けています。
海外市場での経験
ニッチなブランドにとって、台湾の国内市場は限られており、同じような商品でも競争が激しいため、国内市場だけでなく国外市場を開拓することが非常に重要です。しかし、海外の展示会に参加するにはコストがかかるため、まずは政府部門が主催する海外のグループ展示会に参加し、政府が主催するグループ展示の機会を通じて、他の小規模ブランドとともに各国の市場を開拓することにしました。2013年から海外の展示会に出展していますが、市場によってさまざまなフィードバックをいただいています。
以前は、現地のマーケットにちょうどいい商品があれば、すぐに注文をいただくことができました。例えば韓国では、カラフルな商品が好まれます。私たちは長年、動物のフィギュアにカラーペイントをしてきた経験から、他の木製ブランドに比べ、特に木製品に色を取り入れるのが得意で、同じ木製品でも目立ちやすいのです。韓国の代理店を通じて、幸運にも韓国のテレビドラマのの中のディスプレイ小道具として選ばれ、「39」や「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」などの人気ドラマに登場し、主人公の机の上の重要な装飾のハイライトになっています。
アメリカの市場は、美術館が多いという点でユニークで、ほとんどの都市にアートやデザインの美術館があり、美術館の中にあるブティックは通常、シーズンごとに特別な商品や面白い商品を必要としていますので、私たちの製品は世界の主要なデザイン展を訪れるミュージアムのバイヤーから注目されることは自然なことです。
前の2つの国に比べると、日本市場は私たちにとって比較的保守的です。日本では最低でも3年連続で同じ展示会に出展しないと受注につながらないと先輩からよく聞いていました。そのため、コロナ期間を除いて2014年から日本に出展していますが、ブレイクスルーはありませんでした。私たちのような小さな会社にとって、一つの市場に多くの出展料と時間を費やすことはできないと思っています。
しかし、私たちは大学や大学院で工芸やデザインを学び、関連分野の巨匠の多くが古来より工芸やデザインで名高い日本の出身であったことから、自然と日本市場に憧れを抱くようになりました。 同時に、飽和状態にある日本の工芸品やギフト市場が、海外の工芸品ブランドにとって実績を上げることが容易ではないことも理解しており、革新的なものづくりを通じて日本市場に参入し、受け入れられることは、間違いなく私たちの事業家としてのキャリアに対する肯定と励みになります。
Wings of Penシリーズが再び日本市場で注目されるまで
私たちの製品は、遊び道具と実用文具の中間に位置するもので、複雑な職人技のため、日本の娯楽品のギフト市場においてお手頃な価格ではなく、実用性が中心の文具市場には機能的な工夫が行き届かず、本当の意味でのニッチ市場を見つけられずにいました。しかし、以前は物販が主流だった工芸品市場が、コロナ期間後徐々にネットでの購入が受け入れられるようになるとは思いもよらず、また、コロナ期間終了後の対面での贈答活動の活発化に伴い、日本では以前とは異なる木製ペンのトレンドがあるようで、過去にソーシャルギフトというカテゴリーでWings of Penがうまくポジショニングできたおかげで、日本の多くのクラウドファンディングプラットフォームや文具販売店が私たちに注目し始めています。私たちのブランドは12年近く培われ、徐々に一定の信頼を積み重ねてきました。
昨年より、東京在住の同級生や現地の代理店と協力し、ネット販売から徐々に実店舗へと販路を拡大し、一歩一歩人気を積み重ね、より多くの方に商品を知っていただけるようになりました。今後は、より多くの日本の消費者に台湾の工芸品の創造性と趣きを伝えるため、日本での新商品の資金調達も考えています。
この度、都営地下鉄が発行する情報誌「Poco’ce(ポコチェ)」の2024年3月号にて、「デキるオンナは使っている お仕事モードにする秘訣」という特集企画で、Wings of Penシリーズが紹介されました。私たちの製品が日本で知られ始めたことを大変嬉しく思います。
代理店:Roaming Saver
お問い合わせ先:support_amz@aerobile.net
台湾の小規模ブランドへのアドバイス
今後、日本市場に自社製品を売り込みたいブランドは、なるべく関連するクリエイティブなテーマやクラフト素材をベースに、持続可能なシリーズ作品を企画することをお勧めします。一点だけでは市場に浸透しない場合も、継続的に積み重ね、つなげていくことで見てもらえる可能性が高まります。また、自国の文化や生態系の要素を探り、作品に取り入れることも、ブランドのスタイルを形成する重要な手法です。商品化の過程で、近代的なデザイン手法に求められる抽象化やコストコントロールによって、最終的な製品が国際的なスタイルに近くなることは避けられませんが、本来贈答品である工芸品は、製品に内在する精神的・情緒的な要素を残すことも重要です。贈答という行為は、予算の問題だけでなく、主な社会的訴求は感情を伝えることがであるため、商品そのものの本質的な意味やパッケージが適切できちんとしたものであるかどうかが、購入者がコミュニケーションギフトとして商品を選ぶきっかけとなる重要なポイントでもあるのです。
小さなブランドを運営することはマラソンを走るようなものだと思います。自分の得意なスタイルやスキルを見つけ、適切なニッチ市場に切り込み、地道に新商品を提供し続け、それに見合った受注需要や生産能力がないうちは、大量生産や高額な外部マーケティング費用に投資しないことです。独自の少量多品種生産モデルを確立し、クリエイティブなプロセスを継続的に記録する習慣を身につけ、SNSマーケティングのグラフィック制作能力を高め、共有とコミュニケーションを厭わず、徐々に独自のトラフィックを蓄積していくことが、ブランドを維持するための重要なステップです。
中国語原文: ムーファンデザインスタジオ
編集者: Worklife in Japan
日本職活 Worklife In Japan
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