日本で台湾料理を教える!イベントの申し子Hamu

日本に来る目的というのは人それぞれのようだ。私たちはこれまで、外国人が日本にやって来るのは日本で働いてキャリアを積みたいからだとか、より良い生活を送りたいからなどといった理由ばかりだと思っていた。ところが、最近はこれらとは異なる回答がインタビューのたびに得られるようになった。「もっと涼しい場所で暮らしたいから」という人もいれば、「自分への誕生日プレゼントとして」日本に来たという人もいた。

今回インタビューに応えてくれたHamuさんは、当初ワーキングホリデーのために日本を訪れ、最終的には「イベント開催」のために日本に残る道を選択した。現在彼女は「Talking×Talking 日本語×台湾華語」と「Cooking Taiwan 食いしん坊・愛吃鬼の料理教室」という2つの日台交流イベントを主催しており、毎週様々なイベントを開いている。

平日は日本企業に勤めているHamuさんだが、週末の「イベント開催」こそ、彼女の「本業」といえるかもしれない。

Hamuさんは来日以前は何をしていたのですか?なぜ日本へ?

幼い頃から日本に興味をもっていました。漫画の影響が大きいですね。漫画を読むのが好きなので。

中学生の頃、家の近くの漫画店をよく手伝っていました。毎日大好きな漫画に囲まれているのが楽しくて。その後は専門学校の外国語学科に入り、日本語を専攻しました。専門学校を卒業してからは事務職員として働きましたが、人と接するのが好きな私にオフィスワークは合わないと感じ、友人の紹介で、とあるカフェの店長を務めることになりました。

日本に来たのはカフェを辞めた後のことです。当時カフェに2年間勤めたものの、なかなか昇格が得られず、何か新しいことを始めるべきではないかと考えていました。そんな時、ちょうど友人たちから「日本でワーキングホリデーをしないか」という誘いがかかったんです。一緒に行く人がいればそれほど大きな心配もありませんから、そこですぐ日本に来ることを決めました。

始めはワーホリで日本に来ましたが、1年経ってワーホリビザの有効期限が切れる頃、日本語の能力に不足を感じた私は、日本語能力検定試験1級を受けるため(日本に来る前は2級でした)、留学ビザに切り替えました。その後日本でさらに半年間勉強を続け、1級に合格しました。それから日本に残って引き続きイベントを開催するため、急いで仕事を探し、就労ビザに切り替えました。

留学ビザの期限が切れる直前、実は少しの間台湾に帰っていたんです。でも、台湾でやりたいと思えることがなく、また家族も私が日本で色々な活動をしている姿を見て、どちらかといえば台湾より日本での活躍を見込んでいたため、私は再び日本に戻ることを決意しました。

 

どうやって日本で仕事を見つけたのですか?

仕事はFacebookで見つけました。始めは人材会社を介して探していましたが、就労ビザのこともあり、あまり積極的に仕事を紹介してくれませんでした。そこで、イベントを開催する関係で知り合ったある日本人が、外国人のために仕事を紹介するという活動をしていて、彼にも手伝ってもらいましたが、自分でも会社の人事に直接連絡するという形で就職活動に励みました。

なぜなら、私は人材会社やサイトに頼らなくても、これが一番手っ取り早く企業と直接連絡が取れる方法だと思ったからです。自己アピールさえちゃんとできれば、きっと企業側がチャンスをくれると信じていました。最終的にFacebookで今の仕事を見つけました。去年の3月から今の会社で働いています。

 

どうして日本でイベントを開きたいと思ったのですか?

当時友人を含め4人でワーホリに来たのですが、バイト以外ではずっと台湾人と一緒にいました。新しい友達を作りたい、もっとたくさん日本語を練習したい。でも、どうしたらいいか分からない。

そこで、友人に台湾が好きな日本人を紹介してもらいました。その人は私を東京のとある国際交流会に連れて行ってくれました。台湾には見ず知らずの人と交流するイベントはほとんどありません。ところが、日本ではこうしたイベントがとても普及しているんです。

日本人と話をしているうちに、自分の日本語が思ったより上手くないということに気がつき、言い間違えるのが怖くて口を開く勇気が少しずつなくなってしまいました。でも、イベントで知り合った日本人はみんな友好的で、辛抱強く私の話を聞いて、正しい言い方を教えてくれたので、それがとても励みになりました。

そこで私は、台湾人と友達になりたい日本人と、日本人と友達になりたい台湾人が一緒に集まれる場所を作りたい、また台湾のことをより多くの日本人や外国人に知ってもらいたい、と思い始めました(当時知り合った日本人の中には、台湾とタイを同じ国だと勘違いしている人もいれば、台湾を中国の一部だと思っている人もいました)。

 

どうすればいいイベントが開催できるのでしょうか?

私の考えでは、イベントを企画する基本は、参加者が参加したいと思えるかどうか、イベントを通して何か得られるものや学べるものがあるかどうか、だと思います。

Talking×Talking:主な目的は、みんなに友達を作ってもらうこと。日本人との会話を通して生活上の語彙を学んだり、発音を真似たりすることです。多くの人は、始めは教科書で学んだ日本語しか話すことができません。日常会話ができなかったり(私もそうでした)、文法は正しいのに発音が少し変だったりします(もちろん、中国語を学びたい日本人にとっても同じことが言えます)。

料理教室だったら、料理を教えるということのほか、食材がもつ効能や、台湾の祭日で食べられる料理を参加者に知ってもらうことが目的です。例えば、台湾では妊娠中の女性が麻油雞麵線(台湾鶏肉そうめん)を食べると体に良いといわれます。ですが、日本にはそうした料理も習慣もありません。麻油雞麵線の作り方を教えた回で、参加者の日本人女性が私のところへ来て、「もし早くこの料理を知っていれば、もっと栄養をつけることができたのに」と話してくれました。

イベント開催前と開催後、参加者一人ひとりと連絡をとり、こちらが関心を示していることを相手に知ってもらうようにしています。開催前に参加者全員に出欠確認をとり、開催後には感謝の気持ちを伝えるのと同時にイベントの感想や要望を聞き、次回以降のイベントに生かしています。

最も大切なことは、そのイベントが自分自身も参加したくなるような、また満足できるような内容・進行かどうかです。自分でさえ満足できないなら、参加者に満足してもらうことは到底できません。

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お仕事のことを伺ってもいいですか?

私が勤めている会社はレディースシューズの貿易会社(OEM)です。私たちの会社では、ブランド会社から靴の生産依頼を受けて、そのデザインリストを下請け工場に送って生産を委託します。工場の多くは中国と台湾にあるため、中国語のできる社員が必要なんです。私は当初会計事務を担当していましたが、そのうち会社と中国・台湾の生産チームとのコミュニケーションを補助したり、部分的に翻訳を任されたりするようになりました。

経営専攻でもなければ日本語もそれほど上手くない私ですが、それでも社長は私を採用してくれました。その理由は、「明るい性格を生かして会社のムードメーカーになってほしいから」だそうです。日本企業は社員採用時、候補者の個性と特質をとくに重視しているみたいですね。

仕事をしながらイベントを開くのは疲れませんか?

おせっかいな性格からか、私は人を手伝うのがとても好きで、イベントを開くことで自分の日本での生活がより充実したものになっています。台湾人なので、こうしたイベントを通して多くの人に台湾の良さを知ってもらうのが楽しいんです。イベントを開くために日本にいると言ってもいいでしょう。だから、「疲れる、疲れない」なんてことは関係ないんです。台湾に帰ることもありますが、私のイベントに参加したいという人がいれば、今後もイベントの開催を続けます。

今後の計画は?

大好きな家族がみんな台湾にいるので、いずれはやはり台湾へ帰ります。みんなから日本にいてほしいと言われるけど、ずっと日本に留まる決意はまだできません。でも現状では自分が今やっていること(イベント開催)が好きだし、日本のほかの地域でも一緒に協力してくれる人を探して、東京だけでなく大阪や北海道などでもイベントを開いて、日本各地の台湾人に日本人と交流してもらえたらいいと思います。台湾に戻っても、台湾で交流イベントを開いたり、交流民宿を開業したりしたいと考えています。

日本に来たいと考えている人に何かアドバイスはありますか?

私はワーキングホリデー、留学、就労の三つの段階を経験しました。ワーホリに来たい人は、1年間しかないので、その期間で一体自分は何を得たいのかを明確にしておきましょう。ワーホリ期間中、私は平日バイトをして、週末には一人で日本各地を旅行しました。束縛のない環境にゆったりと身を置いて、日本と台湾の違いを見るためです。

住む場所はシェアハウスをおすすめします。一般的にシェアハウスに住むのは外国人だけだと思われていますが、実はむしろ日本人、とくに地方から上京してきた人が一番多いんです。私の日本語はルームメイトの日本人のおかげで上達しました。というのも、みんな中国語ができないので、私が日本語を話すしかないからです。なので、空っぽの部屋では寂しい、家族といるような感覚がほしいと思う人は、シェアハウスがいいですよ。

もちろん、多くの人がワーホリビザや留学ビザから就労ビザに切り替えたいと思うでしょう。でも、もし日本に留まって仕事をしたいなら、日本のサラリーマンになる準備が必要だと思います。日本では就活にあたって、マナーや手順に注意しなければなりません。とくに留学生は、半年から1年の就活期間を覚悟しておく必要があります。この点が台湾での就活との違いです。

最も大切なことは、日本語の能力のほかにもうひとつ、「笑顔」!日本のどの求人広告を見ても、採用条件に「明るく元気な人」と書かれています。本当ですよ!日本は外見を重視する国です。といっても、もちろん見た目の美しさということではなく、その人の快活さのことです。メイクもマナーのひとつ。女性だけでなく男性も美容品を使います(私たちのシェアハウスの若い男の子もフェイスパックを使っています)し、日本人は男女ともに目もとのクマを他人に見せません。

それから一番重要なのが、心の準備。失敗や間違いを恐れてはいけません。イベント参加者の中にはあまり話そうとしない人もいて、理由を聞いてみると、多くの場合「日本語を間違えるのが怖い」という答えが返ってきます。でもそれだと、友達や交流の機会を失ってしまいます。せっかく勇気を振り絞って日本へやって来たのに、本当にもったいないです。

私の日本語も最初はひどいものでした。でも日本人の友達と話をする時、日本語ができなくても、字を書いたり例えを用いたりして、いくらでも質問や表現をすることができます。だから日本に来て人との接触を怖がったり、イベントへの参加をためらったりしないでください!参加したらできるだけ話をしましょう。話すことではじめて自分の日本語の弱点が分かります。「話す」ことこそ、最も身に付けるのが難しいスキルだからです。

普段はどんなことでリラックスしていますか?日本で一番好きな場所は?

普段は退勤後ヨガ教室でヨガを練習します。台湾にいる時からヨガをしていて、ヨガをすることで忙しい一日の心身をリラックスさせることができます。休日はよく旅行に行きます。とくに自然豊かな場所や歴史溢れる場所に行って、日本の美しさをじっくり眺めるのが好きです。長旅に出る時間のない時は、公園へ行って散歩したり、日光浴をしたり、ピクニックしたり、読書したりなどします。

日本で一番好きな場所は、新潟です。日本人の友人の中に、実家が新潟で有機栽培農家を営んでいるという人がいて、以前その人の実家を訪ねた時に、稲の収穫などを手伝わせてもらいました。たくさん学んで、たくさん食べました(天然ものは違います)。

 

日本に来たら、Hamuさんのイベントに参加しましょう!

◆Talking x Talking 日本語x台湾華語
https://www.facebook.com/talkingxtalking
「Talking×Talking 日本語×台湾華語」は、日本人と台湾人限定の言語交流会です。参加者の中には、相手を見つけて質問したり、発音矯正を手伝ってもらったりしたい、と思う人もいます。でも、友達との会話中はなかなか質問しにくいものです(私自身もそう)。そこで、イベントの前半に自由交流タイムを、後半に勉強タイムを設けて、毎回日本人教師と台湾人教師にみんなの質問に答えてもらっています。以前、日本人の友人を呼んで台湾人向けに就活講座を開いてもらったこともあります。

 

◆食いしん坊・愛吃鬼の料理教室
https://www.facebook.com/cookingtaiwan
どうやって日本で台湾料理を作るかをみなさんに教えます。私はふるさとの味が恋しくなった時、台湾料理店に行くほか、自分でも作ります。参加者の多くが私に「どこで料理を習ったの?」と尋ねますが、実は台湾では買う方が便利なので、もともと料理を作ったことはないんです。日本では買えない、でも食べたい。だから自分で作るしかありません(食欲はすべてに勝ります)。成功したらそれをみんなと共有したいし、ついでに台湾グルメの宣伝にもなります。前は春節の時に「發糕(中華蒸しパン)」と水餃子を教えました。みんなでおしゃべりしながら自分で作った料理を食べて、とても良い雰囲気でした。