こんにちは!わたしは日本から来た台湾人です- 日本語編集者KIKI

日本で働く台湾人数の統計(2015)の記事中の資料からわかることは、日本で働く台湾人の中で最も多くの数を占めるのが永住権を持つ者であるということである。さらに配偶者として入国した者を含めると、半分近くの台湾人が日本で長期に渡って生活するつもりがあるということになる。さらに、日本は制度上二重国籍を認めないため、家庭を持ったら、その子供は台湾国籍を持つことになるというのも一つの選択となる。となれば、もしかしたら「日本で生まれ育った台湾人」というのは、そこまで矛盾した響きにはならないかもしれない。

今回インタビューしたKiKiもそのひとりである。パスポート以外、普通の日本人と変わらない彼女は日本や台湾にどんな思いを抱いてて、またなぜ台湾への大学院進学を決意し、台湾で働こうと思ったのだろうか。

 


 

 簡単な自己紹介

 

わたしは日本で生まれた台湾人で、小さい頃から日本で育ちました。日本の大学で教育学を専攻し、卒業後台湾の大学院に進学するのを決め、台湾では華語教育を学びました。2015年に修士を卒業したのちには、台湾の出版社にて日本語編集を担当しており、主に日本語の教材を作っています。

 

どうして台湾の大学院に進学することに決めたのか?

 

わたしの家族は祖父と父の代で日本に来ました。なのでわたしは日本での3代目になるのかな。わたしがまだ小さい頃、周りの大人たちは台湾の文化と親しみがあって、小学校を卒業するまでは毎年台湾に帰って親戚と遊ぶこともありました。だから、その頃はまだ自分が台湾人だという意識がまだあったかもしれない。でも、中学校に上がってからは勉強が忙しくなって、台湾に帰る機会も減っていきました。自分も何だか他の日本人のお友達と違うなという意識が出てきて、特に思春期になると、ちっちゃい違いとかでもすごく気になってしまうじゃないですか(笑)。だからしばらくはあまり台湾のことは考えないようにして、距離を置いていました。

大学生になって、夏休みにアメリカへ短期の語学留学に行く機会がありました。その学校で台湾人の留学生たちと知り合ったのです。その時、どこから来たのか聞かれると、自然と日本から来たと答えるけれども、でも相手に日本人だと思われるのはちょっと違うなと思った自分がいたのです。その時に、自分のアイデンティティーに戸惑いがあることに気がつきました。

自分が育ってきた背景や経験を振り返ってみると、行動や思考は日本人と変わらない気がするのに、でも何だか違うなという気がする。たとえば、名前とか、両親のしつけとか。うちの両親は外国人だからという理由でわたしたちが遅れをとらないようにと、いろいろな習い事をさせました。そのためによく母は車で学校まで迎えにきたりしていました。周りの日本人の子たちはそんなこと全然なかったので、当時わたしはそれがすごく嫌でしたね。

大学を卒業してから、周りの日本人の友人たちはほとんど就職しました。ただ、わたしはすぐ働きたくなくて、もっと勉強したいと思った。もともとは欧米系の大学院にあこがれていたけど、ただいろいろ考えているうちに台湾や、自分のことについてもっと知りたいと思ったので台湾で華語教育を学ぶことにしました。

 

台湾と日本で勉強してみて、どんな違いがあると思う?

 

台湾の大学院に来てから日本と台湾の教育にはいろいろ違うことがあることに気がつきました。まず、最も驚いたのは、台湾の多くの学生が大学院を受験するために塾や予備校に行くこと。日本では何か特定の専門領域の大学院を目標としない限りは、塾に行かず、家や図書館などで自分で準備することが多いと思います。さらに驚いたのは台湾の大学院へ進学する学生の比率が日本のそれよりずっと高いこと。ただ、台湾ではすでに高学歴化が進んでいて、大卒はもう珍しいものではなくなっているということが関係しています。日本でもある程度はそうと言えますが、台湾ではそれが学生に直接与える影響が日本よりずっと大きく、深刻なものなのです。これも後から知ったことなのですが、台湾人学生の大学院への進学動機の多くのがより良い就職をするためなのです。なぜなら学歴が台湾の若者の仕事や就職先の待遇に大きく影響するからです。

では日本はというと、日本の多くの大学院生の主な目的は研究になります。なので、大学院へ進んだ学生の中で、研究の道を志している人は少なくありません。理科系の学生には一般企業への就職を前提として修士に進む者も確かにいますが、でも日本では多くが大学を卒業したらそのまま社会人になります。

では、なぜ日本と台湾の間にこのような違いがあるのか考えてみると、その原因は就職における制度の違いにある気がします。日本の大学生が仕事を探す主な手段はいわゆる「就職活動(略して、就活)」になります。就活は毎年大学と企業が提携して行い、多くの大学生が就活を通して仕事を見つけます。上手く行けば、大学卒業前に企業の内定をもらえることができます。よって、日本の就職市場においては新卒のほうが有利であるのに対し、台湾ではそうではないので、台湾の学生は卒業までにいかに自分の専門スキルを高められるかが重要になってきます。なので、台湾の大学院は日本の大学院に比べて、もっと実用的なことが求められるし、実習やインターンの機会や種類も多いと思います。

 

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台湾で他にカルチャーショックを受けたことは?

 

台湾の若者は海外志向が強く、海外の大学院へ進んだり、就職したりすることを目標にしている人が少なくありません。外国語能力も高いと思います。英語はできて当たり前だし、多くの人がそれ以外に第二外国語を学んでいます(日本語や韓国語、フランス語など)。日本の若者はそれに比べると、海外志向が強くなく、日本の大学生の中には「英文学科卒だけど英語できません」とか、「TOEIC800点取ったけど、外国人と話すのは無理です」みたいなのは結構普通だったり…。自分の周りの友達を見てみても、海外に出たいとか、留学したことある人は少数派です。

台湾人と日本人の女性のキャリアに対する考え方もだいぶ違います。日本では結婚を目標にしている女性が少なくありません。もう昔ながらの専業主婦みたいな考え方はさすがに古くなってきているとは思いますが、やはり結婚を重視している女性はまだまだ多く、仕事バリバリやっていきたいみたいな人は少ないと思います。むしろそういう女性は例外として扱われるかもしれません。台湾では夫婦共働きが当たり前なので、日本より働いている女性はとても多く、仕事も見つけやすいです。なので台湾の女性の方が考え方が自立していて、自分のキャリアや専門に対して高いプライドを持っている気がします。

 

大学院を卒業した後、どうして台湾に残ろうと決めたのか?

 

「どうして台湾で働くの?日本で働いたほうが良くない?」という質問は本当によくされるので、ここでいっぺんに答えてしまいたいと思います(笑)

確かに、給料や待遇で考えると、日本と台湾では大きな差があります。でも台湾で働こうと決めたのは、仕事の内容で就職を決められるからです。台湾では自分のやりたいことや好きなことを仕事にできるチャンスが日本よりずっと多いと思います。以前父に言われたのですが日本では単に就職とはいっても「職に就く」のではなく、「会社に就く」という考え方のほうが一般的だと言っていました。当時はその意味がよくわからなかったのですが、自分がいざ就職となった時に、その意味がよくわかりました。日本では就活の際、「仕事を探す」というよりかは、「会社を探す」感じになります。そうなると、やはり大企業がいいということになって、人気の大手企業は説明会の申し込みでさえ奪い合いとなります。会社側も、新卒に対して「こういう職の空きがある」という形で応募は通常かけません。新入社員は入社して3か月研修を受けた後に、それぞれの部署に配属されます。日本のこうしたシステムは新人教育を重視しているからともいえるし、ただ自主性に圧をかけてしまっているともいえます。「石の上にも三年」とも言いますが、このようなシステムはこれから変化を強いられるでしょう。

わたしは、自分の成長してきた環境とバックグラウンドの関係で、文化の多様性や言語教育にずっと興味を持っていました。大学でのメジャーは教育学で、とくに外国籍の子どもたちの言語教育に関心を持っていました。台湾では華語教育を専攻し、修論ではバイリンガル教育を題材にしたこともあり、台湾で日本語編集として日本語の教材開発に携わることにしました。今はLiveABCで日本の教科書を作る傍ら、 日本女孩在台北というフェイスブックのブログで、台湾で見たこと、感じたことを記録しています。

 

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自分にとって台湾と日本とは?

 

実は当初台湾に来たのは、日本にいるのが嫌だったというのがあります。日本で生活しいると何とも言えないストレスに常に付きまとわれる感じがして、何だか社会全体が重い空気に包まれている感じがするのです。特に東京という大都市は恐ろしく、街全体が常に大きな口を開けて待っていて、一歩でも踏み外せば飲み込まれてしまうような感じがするのです。台湾に来て、すぐにその開放的で自由な生活スタイルに魅了されました。でも半年も過ぎると、それもいわゆる文化におけるハネムーン期というやつだったことに気づかされました。それからは客観的に2つの文化を比べるようになり、そうしたら2つの文化の間に優劣はなく、どちらにもいいところと悪いところがある、2つの全く異なった文化であり、比べることのできないものだとわかったのです。そこで上手くやっていけるかどうかは、どの国で生活するかによって決まるのではなく、そこで何をするかによって決まるのだと思いました。

わたしにとって、台湾と日本、両方とも同じように重要で、同じくらい好きです。2つともわたしにとっての「帰る場所」であり、どちらにも家族や友だちがいて、それぞれの生活環境や文化が心地よいと思えて、両方の地でかけがえのない思い出もたくさんできました。世界に2つも帰れる故郷があるということは、わたしにとってとても幸せで幸運なことだと思います。わたしは海外に出ても現地になじめず、さらには現地での生活にがっかりしたために帰国してしまったという人も見てきました。残念だと思うのは、こういう人たちは結局同じ角度でしか2つの国を比べられず、自分と違う土地や文化を受け入れられなくなってしまい、その結果その国の良いところを見落としてしまうからだと思うのです。だからそういう意味でも、自分はとても幸運だったと思うし、この2つの故郷をより大事にしたいなと思うようになりました。

 

日本で生活したい台湾人へ何かアドバイスは?

 

言語は不可欠要素である以外に、日本文化に対してもある程度理解を深めておいた方がいいと思います。日本は「空気」を非常に重んじる社会です。確かに、これが日本文化において外国人に日本文化の排他性を感じさせる部分であることは認めますが、「郷に入れば郷に従え」という言葉の通り、日本へ行く以上は必要不可欠だと言えます。日本には「社会における暗黙のルール」が存在していて、まずはそれに慣れることから始めることが必要でしょう。なので、日本社会に適応したかったら、まずは日本人同士の人付き合いに関してある程度理解してから行った方がいいと思います。じゃないと、日本に行ってから人様の地雷を踏みまくることになってしまいます。それから、日本での生活に対してあまり期待しすぎるのはお勧めできません。行ってから絶対にがっかりするからです!(笑)

日本へ行ってからは、現地の文化に適応する努力をしながら、文化の良いところ、もしくは悪いところのどちらかだけを見るのではなく、自分の母国の文化と現地の文化を客観的に比べるようにするといいと思います。わたしは、ひとつの国を愛するということは、その国の良いところを見つける以外に、悪いところも受け入れながら、その経験を糧に自分を成長させていくことだと思うからです。そしてこれこそが現地で生活する一番の意義だと思います。

 

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